台風

 
わたしは公園のベンチに座り、缶ビールを開け、一口飲んだ。目の前の小学校から出てきた一組の親子連れが明るい声で話しながら自転車に乗ろうとしている。間もなくして、クリーム色の作業着を着た男性が現れ、ガッシャンと音を立て門が閉まった。暗闇に浮かび上がった白い校舎の上に、輪郭がぼやけた月が淡く黄色く光っていた。

 
わたしは56。来年の2月で57歳になるサラリーマンである。ここ半年ほど、会社帰りにこの公園で缶ビールを一本飲むのが習慣になった。ビールが残り少なくなったところで、バッグからスマホを取り出し画面を立ち上げる。これも一連の動作になっている。

「専務が一番よくお分かりだと思うんですが、我が社の現状の業績では役員を含め人件費をさらにカットせざるを得ません。来週で構いませんので、率直なご意見をお聞かせください」「あっ、それと……」

わたしは、急ぎの用事がありますんでと告げて早足で社長室を出た。またこの態度で一悶着あるかもしれない。そんなことより、これ以上給料が減ってしまったらカミさんはどういう反応をしめすのだろうか。スマホが自分の顔を照らしている。
天気予報のアイコンをタッチすると、今にも吸い込まれてしまいそうな白い渦巻きが映りだされた。わたしはふと何年ぶりかに煙草が吸いたくなった。

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皆さま、台風にはくれぐれもご注意ください! (^^)/~~~



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